英語の勉強は難しいのか

日本人にとって英語は本当に難しいの???―言語学の院生が考察してみた

日本人にとって、英語を勉強するのはもはや当たり前。でも、完全にマスターできる人は一握り。それは英語が難しいからなのか?英語と日本語がかけ離れすぎているからなのか?はたまた日本人の勉強方法が間違っているの?言語学専攻の院生が考えてみました!

英語は難しい言語なのか?①―発音について

「難しい」かどうかを、いくつかの基準に分けて、考えてみたいと思います。一つ目の基準は、英語の発音!発音については、母音と子音の数、発音の仕方の難しさを見てみます。まず母音ですが、英語には26の母音があります。日本語は「あ」「い」「う」「え」「お」の5つしかないことを考えると、相当多いですね。例えば同じ「a」のつづりであっても、続く文字によって「æ」「ʌ」「a」「a:」「ə」と使い分けをしなければなりません。

次に、子音。英語の子音の数については、日本語と同じくらいです。難しいのは、「二重子音」と言われるもの。例えば“Thanks!”というときの“ks”のように、日本語では“ku(く)”+su(す)”と発音し慣れているところを、母音を入れずに子音だけで発音する、という場合です。

発音の仕方

他の言語と比較してみましょう。フランス語の母音は英語と同じ26個。フランス語の母音は独特で難しいとよく言いますが、“つづり”と“読み方”が一対一対応で決まっています。反対に英語は単語ごとに発音の仕方を覚えないといけないので、その分難しいといえます。中国語の母音は36個もあります(諸説ありますが)。これは、「音調」というのを変化させるから、すなわち音程で母音を区別するからなんですね。ベトナム語は中国語よりもこの音調の変化が複雑で、日本人にとってはとっかかりにくい、英語には音調の区別がないという点で、学びやすいです。

英語は難しい言語なのか?②―文法について

第二の基準として、文法について考えてみます。よく習うように、英語の基本的な語順は「主語(I)+述語(eat)+目的語(an apple)」。それに対し、日本語は「主語(私は)+目的語(りんごを)+述語(食べる)」。英語を話すときにはスイッチの切り替えが必要…日本語と語順が同じ、韓国語に比べると英語は難しいと考えられそうです。また、英語には「時制」(eatate, eaten)や「格」(Ime, my)があり、日本語と考え方が異なるので最初は難しいと感じられるでしょう。でもフランス語やドイツ語の「時制」は英語よりも種類が多く、ロシア語やポーランド語の「格」変化は英語よりはるかに複雑。

日本語にないこうした文法構造は、そもそも理解するのも難しく、それを使いこなすとなると訓練が必要になります。また、こういう構造をとらえるのが“得意”な人もいれば“不得意”な人もいるので、一概に英語の文法は難しい!とは決められないですね…

英語と日本語はかけ離れている?

「言語の距離」というのを測るのがいかに難しいか、いかに多くの要素を考えなければならないかが何となく伝わってきたでしょうか。発音や文法の違いを基準に考えると上記のようになんとか整理することはできるのですが、「文化の差」も考えてみるとさらに話は複雑になります(話を複雑にするのが学者の仕事です笑)。

文化の違い

ここでいう「文化の差」とは、同じアジアに属するとか、歴史的に関りが深いとか、言語の”外”にある要素を指します。例えば中国語は日本人にとって「言語の構造上」難しいけれど、日本には中国の文化がかなり入ってきているから、文化的に理解しやすい部分がかなりあります。その一方で、文法構造の比較的単純なインドネシア語は理解しやすいかもしれないけれど、文化的に日本とはかけ離れているから、インドネシア語を使いこなせるようになるのは難しいかもしれません。こんな感じで「言語間の距離」は、言語「外」の要素も含めて考えてみる必要があります。

日本人の勉強方法は間違っているの?

筆者は勉強の方法よりも、外国語学習の目標の立て方に問題があるというか、改善の余地があるのでは、と考えます。日本で普通に勉強して、就職して、という人生を送るとしたら大半の日本人にとって外国語は必要ないという事実がある中で、最近「英語やらなきゃ」「日本人は英語ができない」といったアイデアのみが先行してしまって変な緊迫感が生まれているように感じています。根拠が謎の「英語やらなきゃ」は、目的地を定めずに旅行に出かけるようなもの。それなりに楽しいことや収穫“ぽいもの”は得られるけれど、ゴールを設定しない限り目的地にたどり着くことはなくて焦り続ける、という妙な状況を生んでしまいます。

そんな状態で「英語の文法は難しい」「日本語と英語はかけ離れている」と考えてしまうのはもったいない!自分はどんな目的で英語が必要で、そのためにどんなレベルの文法をやらないといけないのか、文化面ではどんな勉強をしないといけないのか、こんな風に分析ができたら英語の学習はもっと効率的で、楽しいものになるのではないでしょうか?

まとめ

日本人にとっての英語の難しさを、発音・文法、文化的な要素から考えてみました。日本語と違う点が盛りだくさんの英語ですが、単純に努力するだけで言葉の壁を乗り越えることができる点に私はロマンを感じてしまいます。